2017-01-04

一緒に育てて一緒に食べる。未来の食卓を学校から改革するエディブル・スクールヤード・ジャパンのいのちの教育




こんにちは、mihomihoです!あけましておめでとうございます!

明けまして初めての記事は少し長文だけど、ぎっしり実の詰まった美味しい記事ですよ~

学校に食べられる畑があったら?

私だったら、こんな寒い冬でもウキウキで校庭に出ちゃうかもしれない!

コンビニやスーパーが街に溢れ、いつでもどこでも食べ物が気軽に手に入る日本。

その「物質的」豊かさの一方で、私たちの周りは、食の安全性の問題、食料自給率の低下、大量の食料廃棄など....

あー問題がいっぱい!!


こうした社会の現状に危機感を抱き、皆がアクセスできる公立学校教育の現場から、未来を生きる子供たちに、食と農を通じた「いのちの教育」を届けようと努力し続ける人々がいます。


今回紹介する「エディブル・スクールヤード・ジャパン(以下ESYJ)」代表・堀口博子さんが東京都多摩市愛和小学校で始めたのは、もうひとつの教室である「畑と食卓」を授業の中心に据え、体験を通じて自然を敬い、いのちの繋がりを学ぶ、画期的な教育モデルでした。



畑から食卓までを学校で



「この野菜はカブです。ラディッシュとも言います。生でも食べられますが、火を通すとよりあまくなり、かおりも強くなります。味わってみて。」


ハイキングしながら菜園を身近に感じられるガーデン・ハイクの質問は楽しくて興味をそそられるものばかり!


愛和小学校の一画に立てられた看板の数々。

 
これは、先日行われたガーデン・ハイクという授業で使われた道具たちです。

授業当日はあいにくの大雪でしたが、それでも子どもたちは畑に出かけ、植物の前に置かれたなぞなぞを解いていきました。

教室に戻る前に1人1つずつカブを収穫。
真っ白な雪景色に、真っ赤な色の小さなカブ。
授業の最後には、子どもたちがみんなで作った「愛和味噌」と一緒に、カブを味わいました。


手作りの看板が立てられた菜園には季節ごとに様々な野菜が植わります



この授業が行われたエディブル・スクールヤード(食べられる校庭)は、愛和小学校の食育の中心です。
子どもたちは、自らの手で畑を耕し、作物を育て、収穫した野菜を調理し、みんなで一緒に食べる、という一連の作業を、学校で経験します。

こうした実体験によって、いのちが生まれ、それが自分たちの栄養となって、自然の中で循環していくということを、彼らは頭ではなく身体で覚えていくのです。




様々な学びの入り口としての菜園



ESYJにおける菜園は、様々な学びを促進し、子どもたちの可能性を引き出す役割をも担います。


フィルさん「ニワトリがやってることには全て意味がある。羽で何が作れる?
生徒「布団!!」
フィルさん「そう!燃料にもなるね。あと、家の断熱材にもなる」


ニワトリを優しく抱きながら、自然な会話で生徒たちの想像力を引き出していく本間・フィル・キャッシュマンさん。普段は、パーマカルチャーデザイナー兼ビルダーとして、千葉県で農園を管理しながら大人や子ども向けのワークショップ、ガーデンの設計などを行っています。

ESYJの授業のカギを握っているのが、担任教師と協力しながら授業を進める、こうしたガーデンティーチャーとキッチンクラスティーチャーと呼ばれる外部講師達です。

フィルさんのニワトリの授業に耳を傾ける生徒たち


愛和小学校の4年生はニワトリの飼育担当。この日は、普段お世話しているニワトリを観察しながら、身近ないのちについて理解を深める授業が行われていました。

途中、ニワトリが教室内で糞をして、「くさーい!」と大騒ぎ(!)する子どもたち。

フィルさん「糞、臭ってるよね。でも、上手く利用したらこれで家のことをあっためられる」

フィルさんは、分かりやすい言葉と子どもたちの理解が追い付く無理のないペースの語り口調で、彼らの実体験と生きものの役割やそれが持つ意味を結び付けていきます。

ESYJが目指すのは、切り取られた科目としての学校菜園ではなく、国語、算数、理科、社会などあらゆる科目と統合され、食を通して様々な学びが発展していく食育菜園です。

堀口さん「今は、トマトを育てたら持って帰って終わり。持って帰らなければ枯れて終わり。」

代表の堀口さんは、従来の学校での栽培体験が、一時的なものに留まってしまっていることを嘆きます。

堀口さん「食育には色んなやり方があっていいと思います。でも、私にとっての食育は、いのちの繋がりであり、これは絶対なのです。」

将来的には、この愛和小学校での取り組みが日本全国の公立学校に広がっていくことを目指し、彼女を始め同小学校の食育に関わる教員やスタッフは、現在学校側のカリキュラム(学習要項)とESYJの授業内容を調整し、統合していく作業を進めています。




荒廃した中学校が全米中の教育モデルになった



エディブル・スクールヤードというプロジェクトは、1994年、アメリカ合衆国のカリフォルニア州バークレー市にある公立中学校で始まりました。
アメリカ中にオーガニックを知らしめるきっかけになった有名レストラン「シェ・パニーズ」のオーナーであるアリス・ウォータースさんは、仕事の行き帰りに通り過ぎる中学校の荒廃した姿をいつも気にかけていました。





というのも、当時、90年代のアメリカの学校を取り巻く状況は非常に深刻で、児童の非行・犯罪、肥満、人種差別、経済格差、いじめは日常茶飯事。この中学校も例外ではありませんでした。

かつて、生きる知恵や礼儀を学び、社会性や自尊心など培う場であった食卓。家族で食事をする機会が減っていく中、アリスさんは、荒れる学校や子どもたちの現状は、食に原因があり、学校教育の改善に努めることが私たち大人の責任であると考えました。

生徒、教員、ボランティアが一丸となり、駐車場を菜園に生まれ変わらせるところから始まったこの取り組みは、児童のみならず、地域の住民をも動かし、その例を学ぼうと全米・世界各国から研修生が集まるほど注目されるようになりました。

あの米国大統領夫人のミシェル・オバマさんが、ホワイトハウスに菜園を作ったきっかけも、こうしたアリスさんらの活動に後押しされたことだというから驚きです。




ものづくりから食育へ



では、なぜアメリカで生まれたこのプロジェクトが、日本に輸入される形になったのでしょうか?

「授業を運営するスタッフにもパワーをくれる。それがこのプロジェクトの凄いところ」と堀口さん



堀口さんは、元々コピーライターや編集者としてキャリアを重ねてきました。
当初の関心分野であった、ものづくりの世界について様々な取材を経験する内に、農業に興味を持ち始めたそうです。

堀口さん「美しいものが生まれる、そのすぐそばに、『食べもの』があると気付いたんです」

ある日別の用事で尋ねたアメリカ・オークランドで、現地の新聞に載っていたエディブル・スクールヤードの特集に目が留まります。
その後、実際に現場を訪れ、取材をしてみると、自分自身が今まで追い求めてきたものがまさにこの活動そのものであることに気が付いたそうです。

堀口さん「ものが生み出される場所っていうのは、とても自由で、美しい人々によって美しい場から美しいものが生み出されるの。それがたまたま教育だったんです。」

それから3年間エディブル・スクールヤードの取材を続け、「食育菜園―エディブル・スクールヤード―」という本を翻訳して出版しました。その本を読んだ愛和小学校前校長より連絡があり、社団法人を設立、2014年から同小学校での活動が始まったのです。

(書籍の詳細はこちらをどうぞ~↓)




エディブルの授業が好きだから、止めないで!



2016年で3年目となったESYJの活動は、関わる子どもたちや保護者に着実に変化を生み出し、また、両者との協力関係によって成長し続けています。

その効果が最も顕著に表れたのが、活動開始以来、最大の困難に直面した際でした。
2016年の4月、活動開始のきっかけを作ってくれた前校長が他校に異動することになり、まだ実験段階であったESYJも撤退しなければならない状況になってしまいました。

堀口さん「卒業した中学1年生が『エディブルやめないで!』って校長先生に直談判したんですよ。学校の中に食卓があるというのは、すごいことなんだと思います。」

この子どもたちの賢明な訴えによって、ESYJは無事に3年目を迎えることができたそうです。


この日とれた両手いっぱいの卵を嬉しそうに見せてくれた子どもたち


堀口さん「普段クラスに出ない子も、菜園のクラスには積極的に参加する子もいます。菜園での授業は、自然の中で子どもたちの居場所を作ってあげられるんです。」

ESYJには、日々、児童たちの様々な変化の様子が伝えられます。児童の中には、自宅で野菜作りを始めたり、積極的に料理をするようになる子もいるそうです。

また、普段の授業時には、有志で集まった「エディブル・ママ」と言われる保護者がESYJをサポートしています。授業で必要な道具をスタッフと共に準備したり、子どもたちの家庭での変化などを報告してくれたり、学童と協力したイベントへの呼びかけを行ったりと、活動には欠かせない存在になっています。

思わず子どもたちの手から離れたニワトリ。お昼だったのでお腹がすいたのかも。この後逃亡戦が繰り広げられる


ESYJの活動を通して見えてきたのは、児童である子どもたち、地域の大人、スタッフ、教員が一丸となって作り上げ、それ自体が関わる全ての人々の学びの場そのものとなっていく、「学校の中の食卓」を中心とした新しい教育の在り方でした。

食育の必要性を訴える声はよく聞かれるようになってきましたが、日本の学校教育では、他の科目に押されて食育の授業そのものの時間が確保できない、準備をする余裕がないなどの理由で、隅に追いやられがちというのが現状です。

食べることの意味が問い直される今だからこそ、学校教育現場では、ESYJのような団体が協力し、いのちの繋がりを丁寧に学んでいく学習環境を整えていくことが求められているのではないかな!と思いました!

最後まで読んでくれてありがとうございます!

エディブル・スクールヤード・ジャパンの活動が気になる方はこちらから!

HP:http://www.edibleschoolyard-japan.org
FB:https://www.facebook.com/EdibleSchoolyardJapan/




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